涙の雨と君の傘
名瀬 優花の慟哭

すん、と。

鼻をすする音が、静かな教室にやけに大きく響いた。


「そんなこと繰り返して、中2から付き合ってもう3年。アイツが浮気した回数は、私が知ってるだけで両手じゃ足りないくらい」


むしろ両足入れても足りないんじゃないだろうか。

アイツは本当に、どうしようもない女好きの遊び人だから。


「言い訳もいっつも同じ。女友だちと遊んでただけで、浮気じゃない。好きなのはお前だけだって」


なんて陳腐なセリフ。

聞き飽きて、まったく胸に響かない。


私は知ってる。

アイツがこれまでそのたくさんの〝女友だち”たちと、ふたりきりでデートしたり、手を繋いだり、


時にはその〝女友だち”の家に行っていることも。



アイツは目立つし、女好きで有名だから、噂なんていくらでも入ってくるのだ。

私が聞きたくないって、耳をふさいだとしても。


「そんな最低な奴なのに……嫌いになれないの」


浮気が発覚するたびに、嫌いになれる気がするのに。


最悪だ、別れる。

今度こそ、絶対別れる。


そう思うのに……。


ごめんって謝られると、情けない顔で許してって言われると、

ああ、やっぱり好きだって思ってしまう。



どうしようもないのは私も一緒だ。

私もどうしようもなくバカな女なのだ。
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