涙の雨と君の傘

くせのある、長めの黒髪。

横顔のおでこから顎にかけてのラインは美術品みたいに綺麗で。

白い肌に、ぼつんと浮かぶ泣きぼくろが印象的。


笹原明人(ささはらあきと)

やたら顔が整っていて、女子に大人気のクラスメイトだ。



「……別に、嫌いになる必要はないんじゃないの」


笹原は私の方は見ずに、ぼそりと言った。

窓際の机に腰かけて、夕方の空を見つめている。


「それ、どういう意味?」

「さあ」


さあって……。

教える気はないってことですか。


「……なんで私、笹原にこんなこと愚痴ってんだっけ」

「たまたま、俺がいたから?」


笹原の声はちょっと低くて滑らかで、耳に心地良い。


差し出されたハンカチを受け取って、遠慮なく涙を拭う。

柔らかくて、優しい香りのするハンカチに、なんだかまた泣きたくなった。


「笹原、こんな時間まで何やってたの」

「図書委員の当番」

「ふーん。悪いね、疲れてるとこ付き合ってもらっちゃって」

「別にいいよ」


そっけない。

でもいまは、それがありがたかった。
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