涙の雨と君の傘
「帰ろ。……笹原は?」

「俺も帰る」

「だよね。笹原帰るとこだったんでしょ? マジでごめんね」

「別に。暇だったし」


そう言って、笹原も立ち上がる。

背が高くて、モデルみたいに手足が長い笹原。

でも細身でひょろっとしてるからか、圧迫感みたいなものはまるでない。


床に伸びた笹原の影は、本人より更にひょろりと長くて、ちょっと笑えた。


「愚痴ってすっきりした。ありがと」


廊下に出る前に一応お礼を言っておく。

私の後ろに立つ笹原は、何も言わなかった。


何を考えてるのかわかんないけど、悪い奴じゃないんだろうな。


私生活に関して色々噂がある、ミステリアスな笹原のことを、そんな風に思った。
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