NIA 〜紅い糸が切れるまで〜
目を閉じて、再び開いた時ベガの姿はなかった。
先ほどの剣戟が、嘘のようだ。
しんしんと降り積もった雪。
凪いだ風。
凍った月。
変わらない。
なにも。
ルナは窓の外を睨んでいる。
私もつられて見るが、闇があるだけで何も見えやしない。
「気をつけろと、忠告したはずだ」
ルナが言った。
単に怒っているようだ。
語尾を荒げたりはせず、静かに怒っている。
誰でもない、私に対して。
「親父から、大まかなことは聞いたはずだ。
自分が何者か、早いとこ理解した方がいい」
言われなくったって。
自分が何者か…、
そんなの、よく知ってるよ。
どうせルナも、私のことを