NIA 〜紅い糸が切れるまで〜
「…場所を移す。
今夜は、この部屋にいない方がいい」
俯いた私を無視して、ルナは私の手首を軽く握った。
冷たい手だった。
振り払う隙もなく、ルナは静かに目を閉じて、私を引き寄せる。
笛の音が聞こえた。
甲高い、鳥とはまた違う軽やかな音。
「ーー着いた」
ルナの言うとおり。
目の前には、知らない家具が並んでいて、私の部屋はどこにもなかった。
本当に、ここに来てからというもの、驚くことばかりだ。
何もないところから、刀や剣を出したり、姿を消したり、かと思えば知らない場所に移動していたり…。
魔法…それとも、超能力。
もしかして、あのベガって人が言っていた、NIAなのかな?
もし、NIAだとしたら…。
ベガが口走ったように、私も使えるってことなのだろうか。