NIA 〜紅い糸が切れるまで〜
「俺の部屋だ」
ルナの手にはマグカップがあった。
そういえば、コーヒー豆の香りがする。
ルナは、私にも同じものを差し出すと、手近にあった椅子に腰掛けた。
もらったコーヒーを口にする。
苦い。
どうせなら、ミルクや砂糖を入れて欲しかった。
「驚いたか?
だが、説明は受けていたはずだ」
説明…ね。
よくわからない、講義なら受けた覚えがある。
難しくて、浮世離れしすぎていて、よくわからなかったけれど。
「ここは、見た目こそお前が住んでいた世界と変わらないが、中身は全くの別世界。
吸血鬼の世界さ」
お前も座れという風に、ルナは空いた椅子を指す。
「と言っても、人間が知るような、吸血鬼とはちょっと違っているが…」
吸血鬼…知らないわけがない。
夜に生きて、人の血を口にする生き物で、太陽の光が嫌い。
ニンニクや、十字架、銀も嫌っているとか。
「そんなものは、人間が作ったただのデマさ。
伝説は所詮伝説に過ぎない。
現に俺たちは、陽の光に当たっても、灰にはならない」