NIA 〜紅い糸が切れるまで〜
“俺たち”
その言葉に、身体が反応する。
そうだ。
吸血鬼の世界なんだ。
目の前にいるルナだって、ルチアさんだって…みんな、私とは違う…吸血鬼なんだ。
忘れちゃいけない。
じゃないと、私はきっと…
ベガに襲われた時の恐怖が、蘇る。
「吸血鬼には、貴族階級の者とそうでない者がいる。大まかにはな。
階級の高いものが、低いものを支配する、そうやってこの世界は成り立ってきた…ずっと」
遠い目をしたルナが、一息にコーヒーを啜った。
「お前は、人間だから自分が吸血鬼に襲われたと思ってるだろ」
違うな…。
ルナが呟く。
何故か、ルナの目は悲しげに細められた。
「お前は、ただの人間じゃない。
だから襲われたんだ。
普通の人間なら、上級貴族の彼奴が相手にするはずがないからな」