NIA 〜紅い糸が切れるまで〜
「油断するな。
スーノである限り、お前の血を狙う輩はこれからごまんと出てくる。
決して、誰にも気を許すな。」
ルナの冷たい手が、私の頬に触れる。
ルナは滑らかに手を滑らせ、私の首筋をさっと撫でた。
「俺も含めて、な」
言葉とともに、強引に引き寄せられたかと思うと、首筋に生暖かい吐息がかかった。
それがルナのものだと分かるのに、さして時間はかからなかった。
「スーノの血は、特別甘美だそうだ。
嘗ての先人たちが、身を滅ぼすほどにな。
そして、お前の存在は、国家をも揺るがしかねない」
ルナは首筋にそっとキスを落とすと、そのままの体制で私を見上げた。
「強くなれ。
この先信じられるのは、自分の力だけだ」
全ては月の綺麗な夜のことだった。
このまま目が覚めたら、何時もの生活がそこにある。
そんな幻想さえ、本気で信じてしまうほどに。
でも、現実は甘くはなくて。
これから起こる困難の数々に、
ルナの言葉は、私にとって何よりも正しいものだと、気付かされていくのでした。