先輩、私のこと好きになってくれますか?
* * * *
「ねー、桐生さんのウワサ、知ってる?」
「あー!知ってる!
なんか王子と一緒にいるために、
王子に桃華先輩のウソの悪いウワサ、流したんでしょ〜?」
「そうそう!桃華先輩、可哀想だよね」
「桐生さんって性格悪いねー」
ファンクラブが出来たと聞いてから3日後。
トイレの個室から出ようとすると、
そんな声が聞こえて自然と足が止まった。
え、桃華先輩って誰……。
私と先輩の出会いは、言えば理央くんだけど、
桃華先輩なんて見知らぬ女の先輩が出てきてる…。
ウソのウワサを流してるのはそっちじゃん。
ていうか、そんなウワサ回ってたんだ…。
女の子たちの話し声が遠のいたのを確認して教室に戻る。
なんだかクラスの女の子たちの視線が痛いのは薄々気づいてた。
でも、いつの間にか、動いてたなんて。
「柚乃、どうしたの?元気ないわね」
「沙耶ちゃん、私のウワサ、聞いてる?」
沙耶ちゃんはどうやら初耳らしく、
なんのこと?と首を傾げたけど
また前の探偵並みの頭脳が働いたのか、
まさか…って眉間にシワを寄せた。