captivate
『あ?』


一瞬戸惑うダーム。その前にクリスは急に姿を現した。


『おわっと!!』


クリス自身を一本の軸とした、2本の剣での回転剣舞。その一撃一撃は重く、間髪入れる事無く、ダームに降り注いだ。


『双天二刀流…』


クリスがアーツの隠し名を呟く。その瞬間、それに反応したかの様に2本の太刀に気が集約した…闇の色の濃い、漆黒の気が。


『陣風』


己を中心にして繰り出す、一閃の旋風。その正体は高速で繰り広げられた剣撃からの気の開放であった。


『!!』


思わず腕で防御に回る。しかし、クリスの一閃は重く、深かった。故に防ぎきれず、前腕に深い刀傷を覆う。そしてクリスの起こした風圧で、ダームの身体は後ろへと押されていった。


クリスは残心を取りながら太刀を構え、間合いの取れたままダームを見つめる。ダームはまだ防御を解いておらず、そのまま立ち尽くしていた。


何が起きるか油断できない…


そう考えながら、クリスは警戒を解くことを止めない。するとダームがようやく防御を解いた。


『……殺してやる
 殺してやる殺してやる
 殺してやるぅぅ!!!!!』


突如、闇系譜の力を解放したのか、気の開放と共にドス黒い瘴気がダームを包む。その衝撃波がクリスに押し寄せ、咄嗟に右腕でその衝撃を防ぐ動作を取った。


『貴様…
 よくも傷付けたな!!!!』


そう言いながら腕の血を振り払い、クリスを睨み付ける。その瞳に正気は無く、瞳孔が開き、真紅の眼差しをしていた。


『闇系譜の力で
 消してやるよ!!!!!』


ダームの腕に黒い渦が巻く。クリスはそれを見て一度目を閉じ、口を開いた。


『じゃあ闇系譜を
 破らせてもらおう』


そう言って2本の太刀を逆手に持ち、背後で刀身を交差させた。


『マスターアーツ後継者が一人
 “黄昏の剣聖”
 クリス・ヴァンガード…参る』
< 100 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop