captivate
黒い竜巻の中心を、クリス・ヴァンガードは静かに見つめていた。


疾風が吹き、クリスの髪とジャケットがなびく。


風は最期に強く吹き荒れると、中心へと黒い渦を巻いて収束した。


『それが仲間の命を代価に
 貴様が得た哀れな力か』


殺気混じりの視線を、将軍に向ける。


ニタリと歪んだ笑みを向けるダームの両腕は闇に包まれ、地に触れる程までに巨大化していた。


『ヒャハ』


笑い声を上げて腕を振りかぶる。


振り下ろした瞬間、どす黒い拳圧と闇の波動がクリスを襲った。


クリスの愛刀“氷影”で難無くその一撃をいなす。


そこから攻めに転じる瞬間、眼の前にダームが立っていた。


『!!?』


『よぉ』


腹部に重い一撃が入る。同時に闇の波動が身体に流れる。


『ゴハッ!!!!!!』


口に鉄の味が拡がる。


『まだだ』


ゴッッッ!!!!!!!!!!!!


左の頬に重い衝撃が走る。


クリスは血を舞い散らせながら遠く吹き飛ばされた。


『…』


ダームがクリスのその姿を見つめると、その先に二本の太刀を構える女性が立っていた。
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