captivate
『行きにくいもんだ』


クリスがニルヴァーナのコクピットで溜息をつく。


『3年前の内乱か?』


ゼフィが運転席で笑いながら応える。


3年前クリスがまだ騎士として駆け出しの頃にウルミージュ列島内で、評議会の提示する重労働に反発した労働団体が兵器工場を制圧し、武装組織〈レジスタンス〉を結成。そのまま評議会を消滅させようとしたレジスタンスと、万事に備えて予め強力兵器の大部分を占有していた評議会の間に内乱が勃発。


後に“レドミア内乱”として知られるこの事件にクリスは国際部隊の一員として派遣された。


両者の衝突寸前に、事件の黒幕に当時大手軍事兵器会社社長にして評議員だったニコライ・ジェノースが内乱を誘導し、レドミア通商連合を掌握しようていう計画を、レヴァンティーン共和国立諜報機関“NORSS〈ノース〉”主任にして同共和国政府付属外務官レオン・リーフィアが暴く。


それを聞いたクリスは単独で黒幕ニコライの座る評議会を襲撃、そして捕らえたというのがこの事件解決の真実。史実的にはクリスの“過激的解決”は公表されず、“交渉による平和的解決”が真実とされている。


『評議会は歓迎してくれたぞ
 気楽に行こうじゃないか』


レオンは計器をいじりながらクリスに言葉をかける。


『でもなぁ…』


クリスの複雑な想いとは逆に、ニルヴァーナはアルミージュ列島を眼前に捕らえていた。
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