captivate
ジェイナの気遣いが、目頭を余計に熱くさせる。


セントラルエンベス連合軍本部の一室で、度重なる哀しみに堪えられなくなった女王は、一人涙を流す。


既に騎士団から多くの騎士が失われた。


まだ隊長クラスの騎士はほとんど生きているが、それでも哀しみは減る事がない。


『…大丈夫?』


顔を上げると、部屋の扉に青い髪の魔女、ウィンリィが文献を手に入ってきた。


『また誰かが…?』


ウィンリィは円卓に文献を置き、優しく女王の背に手を乗せた。


『…クリスが倒れました
 まだ…魂は有るのですが…』


その意味にウィンリィが深刻な顔をする。


『戻った時…
 闇に堕ちるかも知れないのね』


黙って頷く女王。


女王執務補佐役にして“水晶”の二つ名を持つ十天魔女は、哀しみに暮れる君主の背をさするしか事しか出来なかった。


『ウィンリィ…私は大罪人ですね』


嗚咽を漏らして話す女王が、側近の魔女の目からはいつもより遥かに小さく見えた。
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