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第9章 剣と聖女
クリス・ヴァンガードの冷たい身体が連合本部に着いた時、軍全体に悲しみの螺旋が渦を巻いた。


各国に名を馳せた若き騎士の無言の帰還を、誰もが悔やんだ。


飛空挺着陸ベイにはルーシャ、リノア、ウィンリイが待っていて、リノアは弟の姿にただ涙を浮かべるだけだった。


『ルーン…“聖母の障壁”』


クリスの冷たい頬に手を当てるルーシャは、静かにそう言った。


『…魂はまだありますよ』


ルーシャはアスカを見て頷く。


『…じゃあ生きてる?』


シュバルツの言葉にルーシャは微妙な表情を作る。


『それは…なんとも…
 とにかく、私が預かります
 レオン、貴方は皆を率いて
 ミジェロ海に向かってください』


『了解』


レオンは真っ直ぐな瞳を、自らが忠誠を尽くす女性に向ける。


ルーシャにはその意味がハッキリと伝わる。


“クリスは任せました”


ルーシャもまたその瞳に強く応える。


レオンは行くぞ、と一言だけ残して再びニルヴァーナに乗り込んだ。


アスカとジェイナは着陸ベイに残り、船が再び空に向かうのをルーシャ達と見守った。


『テンペスタ=レイグラード教会に連絡を
 …彼女にクリスを預けます』
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