captivate
聖テンペスタ。


かつて神が舞い降り、聖なる宝具が授けられたとされる、宗教的に重要な小国。


『この方ですか、ハーネス様?』


聖テンペスタ首都中心部のテンペスタ=ノイグラード教会で、一人の修道女がウィンリイ・ハーネスと顔を合わせる。


『ええ…お願いね、アーシェ』


アーシェと呼ばれた修道女は、黙って頷いて、柩に入れられたクリスを見た。


『私は戦場に帰るわ』


そう言って教会を後にするウィンリイを見送った後で、アーシェはクリスを見た。


『何故、闘わなければ…』


一言呟いて、彼女は柩を教会奥の、リベリアの花畑まで運ぶ。


その中心にある泉にクリスの眠る柩を浮かべ、手を組んで祈りを捧げる。


すると、透き通っていた筈の泉から光は消え、紫を帯びた漆黒が、クリスの柩から広がった。


『…見た通り、なのね』


そして彼女は再び口を開く。


『未来は変えられないの?』
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