captivate
リベリアの花畑の泉に浮かぶ柩は砕け、瞳を閉じたクリスの姿が、闇の波動に染まっていくのだけが、はっきりと見て取れた。


『悲しい力…
 私はこの力を再び
 戦場に…送るの?』


自問自答を繰り返す。


アーシェはその瞳から大粒の涙を、淡い黄色のリベリアの花びらに零す。


『何故争いを続けるの?
 何故何も感じないの?』


一粒、また一粒と涙を零し、華奢なその手で哀しみに暮れる顔を隠す。


『本当に彼の呪いを解けば
 世界は争いから逃れるの?』


一陣の風が舞い、リベリアの花びらが空に舞い上がる。


『私が見た未来は変わる事無く
 終焉を迎えるのに』


自らの想いと行動が衝突し、葛藤を抱く。


闘いを望まない想いと、終わらせたい想い。


誰にも見る事が出来ない未来を知る事で、誰も知らない絶望に堕ちていく。


それに共鳴するかの様に、クリスから闇の波動が一層強くなった。
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