captivate
『ルーシャ、無事にクリスを届けたわ』


外交用の非武装型飛空挺執務室から、ウィンリィが通信を取る。


『ありがとう、ウィンリィ』


静かな声が執務室に響き渡る。


『聖女アーシェ…
 貴女が初めて助けた
 “宝具”の適格者…
 彼女は争いをのぞんでいないわ
 なのに私達は
 彼女を闘いに巻き込むのね…』


通信器から、しばしの沈黙の後に再び静かな声が流れた。


『それでも世界には…
 クリスが…“選ばれし剣”が
 必要なのです…
 例え…裁きを受けようとも』


互いに抱く、罪の意識。


綺麗な名目で言えば、世界の為。


別の見方で言えば、武力に対する大きな武力の投入。


何が正しいのかわからない時代の、この一つの選択が、後の世に善しとされれば、せめてもの救い。


ただそれだけを信じ、ウィンリィはルーシャのもとへの帰路に着いた。
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