captivate
白銀雪の間を後にしたクリスは、闇系譜を使った敵将を思い出した。


今から敵地のど真ん中へ向かう任務が始まると言うことは、あの力ともう一度対峙することになる。


その事実に、どうしても不安が隠せない。


「クリス?」


王宮エントランスで、レオン達と合流すると、ローブを纏い出て来た線の細い男、レイナード・アルフォンスが姿を現した。


「アル。何処にいた?」


「ごめんなさい。また迷ってしまいました」


「何回迷うんだ、お前?」


ロックが呆れたように言う。


「すみません。どーも建物は苦手で…」


人差し指で額を指す、困った時のアルの癖が出た。


「ま、全員揃ったな。クリス?」


レオンが場をまとめ、同時にクリスが頷いた。


「王立魔術教会並びにヨーツンヘイム96代女王、ルーシャ・ディシディア=ヨーツンヘイム様から正式な任務が下された。これから大グラン帝国帝都に向かい、魔女2名を保護する」


レオンは腕を組んで溜息をついた。


「しかし謎だな…何故我々を呼んだんだ?」


確かに。レオンの言葉は最もだ。


帝国将軍が強襲によって各国要人殺害を行ったのは、恐らく魔女の長たる女王を殺す為。にも関わらず、偶然王宮に突入したクリスに再び会うことを望む様な発言があった。


あの時クリスが気付くことが出来たのは“暴挙とも言える魔女狩り、すなわち軍事行為を開始したにも関わらず、南の軍上層部である将軍がゲストとして堂々と現れたのは不審”だったためだ。


そして最後“願ってもなかった”との発言。


ふとある仮説が脳裏をよぎった。


「…真の狙いは俺達か?」
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