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皇帝が必死に気配を追う。


しかし拡がる闇の波動が、クリスの気配を完全に消し去っていた。


「おのれ…おのれェ!!」


皇帝が怒りの感情を剥き出しにし、再び地に黒剣を向けた。


「この…雑魚がアアアァァァ!!」


怒りの咆哮と共に、地に突き刺さった剣から漆黒の波動が放出される。


それは刃となり、謁見の間の柱、床の瓦礫、カーテンを無差別に切り裂いて行く。


倒れる蒼天の翼と二人の魔女に凶刃が迫った時、道が切り開けた様に、別の剣撃がそれを掻き消した。


「双天弐刀流…」


仲間達を護る様に、クリスが再び皇帝の視界に入る。


その姿は右手の太刀を逆手に、左手の太刀を順手に、そして右半身を前にし、前傾の姿勢を取っていた。


「そこかぁ!」


すかさず皇帝が右手でクリスを捕捉した。


右手が禍々しいオーラに包まれる。


間違いなくそれが闇系譜であることを確信したクリスは、更に前傾姿勢になる。


そして再び消えた。


皇帝がそれに一瞬気を取られた。


その一瞬の間で再び姿を表す。


…皇帝の眼の前に。


「な!?」


「一式・陣風」


皇帝の防御は間に合わず、クリスの太刀からは闇の波動を纏った旋風が巻き起こった。
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