captivate
クリスは太刀を華麗に翻し、向かってくる銃弾を、尽く斬り落とす。


緩急をつけ、時に静かに、時に嵐の如く舞うその姿に、敵兵はたじろぎ、その舞に固執するかの様に、弾丸を浪費する。


「防衛ラインを破る。ロック!」


その号令に、ロックが両腕を振りかぶる。


「グラウンド・バンカーッ!」


大地を叩きつけた両拳から、大きな衝撃波が発生し、敵軍を襲う。


その隙にクリスは倒れるシンディアを抱きかかえ、走り出した。


それを合図に、それぞれが負傷者を庇いつつ、混乱する敵兵の中を駆け抜ける。


「アル。右肩はどうだ?」


走りだすパーティの中で、クリスから発せられる言葉の真意を汲む。


「大丈夫。皆さんと違って人を抱えていない分、攻撃に集中出来ますよ」


その言葉にクリスは頷いて応える。


「最強の槍、の異名を持つレオンが先兵にならないとはねぇ。お前の槍も訛ったか?カッカッカッ」


ラナを抱えるロックが高笑いをすると、それにカチンと来たのだろう。レオンは抱えていたシュバルツをロックに渡した」


「お、ヤル気か」


「レオン」


2人の視線の先には、少しどころか御機嫌斜めのレオンの瞳が映る。


「止めてくれるな、クリス。馬鹿に、俺の二つ名を証明してやらねばならん」


止められないと悟ったクリスは、呆れ顔で溜息をついた。


「止めてもやるだろーが」



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