captivate
『ゼアノスは騎士団を築いた後で
 当主の座を降りたらしい…
 それからゼアノスと結婚した
 瞬光の魔女が当主を勤めて
 今のヨーツンヘイム皇室の礎を作り
 分家はゼアノスのミドルネームを継ぎ
 ヴァンガードを名乗った訳だ…』


クリスは立ち上がり、腰の刀を外して壁に立てかける。


『ゼアノスが当主を降りたのは
 その身体に封印した弟を…
 皇帝ディクセンを自分ごと消す為
 …そう言われている』


『だがクリス…
 その名前の皇帝は…』


レオンが煙草の煙を吐く。


『あぁ…
 俺の中にいる…らしいな…』


『…え?』


ラナが眼を見開く。


『それって…魂がまだ…』


『俺の中で生きているってコトだ』


『クリス…自覚はあるんですか?』


『…ない、と言えば嘘だな
 少なくとも違和感はあった』


クリスが口を閉ざし、しばし沈黙が訪れる。


『俺は帝国の血を継ぐ者だ
 つまりは闇の血族…
 この身体に歴史の闇を宿しても
 どこもおかしくはないよ』


自嘲気味にクリスが吐く。
いつもの堂々とした影は無く、とても小さな背中が見えた。
< 60 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop