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湖を覆う敵戦艦が大きな音を上げる。ニルヴァーナに対して砲撃が開始されたようだ。


『急ぐぞ』


クリスは砲撃の鳴り響く冬空を見つめた後、神殿へと走り出した。


『待って!!』


クレアが走るのを止め、掌をパンッと鳴らして前にかざす。すると氷の壁がクレアを中心に出現し、深い森から鳴り響いた銃声の壁となる。


アリスは聖ミミル湖を囲む森を見ながら、2本の太刀を抜く。


アリスは気を抜かないまま魔力を左手に集め、周りを警戒しながら立ち尽くす。


そしてクリスは何も言わず、森林のとある一点のみを見つめた。


『素晴らしいな
 それが魔女の力か』


クリスの見つめる眼が細くなる。視線の先から一人の目付きの悪い男が出てきた。独特の雰囲気を持ち、同時に只ならぬ殺気を纏っている。


コートを肩に掛けた為に隠れた腕は、コキコキと恐怖を煽る音を鳴り響かせていた。


『…帝国軍か』


クリスがそのまま男を睨む。それでも2本の太刀に手をかけなかった。


『そうだ
 …あんたは死んでもらうぞ
 皇帝がそう…お望みだ!!』


突如男が猛スピードで駆けてくる。


クリスも一歩踏み出して、真っ向からぶつかった。


その瞬間、大きな衝撃波が白銀の世界に舞う。同時に空から舞い落ちる雪も、その突風に再び空へと押し返された。
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