captivate
クレアの中で時が止まる。


しかしクレアに襲い掛かった男はその場に倒れこんだ。


何が起こったかわからなかったが、眼の前に別の男の背中が映る。その背中は振り返る事が無かった。


『ココは戦場だぞ!!!!
 意識は飛ばすな!!
 敵を倒せ!!!!!!!』


姉に背中を向けながら弟が怒鳴る。


『そー言うあんたは
 他人の心配かい?』


クリスが姉の前で敵将と思われる、先程クリスとぶつかり合った男の一撃を受け止める。


奇妙なことに、男は素手だった。


『うるせぇ…ぞ!!!』


男の拳を払い、逆に切りかかる。男は間合いを取る為にクリスの絶対攻撃領域から退き、右手の指先を舐めた。


『…任せた』


クリスは姉に一言呟くと、男と共にその場から走り去った。


その速度が余りにも速すぎて、その場には静かに雪の結晶だけが舞っていた。


クレアは見えなくなった弟の言葉に頷いて、再び敵軍と対峙した。そして何かを決意したのか、背筋を伸ばして口を開いた。


『“零氷の魔女”
 十天魔女クレア・ヴァンガード
 …参ります!!!!』
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