ヒーローのそばで。
大きな目をこれでもかというくらい見開いて、桜楽は驚いていた。

俺が教室内を見回すと、どう見ても桜楽1人で、三吉はいなかったことに少し安堵した。

「帰ろうとしてたとこですけど」


桜楽は冷たくそう言った。


資料作りは、終わったのか。


その様子だと、三吉とは何も無かったのか。


俺は嬉しくて、つい、桜楽の前に歩み寄っていた。

「お前、桜楽っていうんだな。俺、鏡原 春河!よろしくなっ!」

俺は初めて女の前で笑った……いや、自然に笑えたんだ。

桜楽は驚いた顔をしていた。

俺は満足と言わんばかりに、教室をあとにした。



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