きみに想う 短編集
「雫!しーずく!
さっきから呼んでるんだけど!」

窓際の椅子にもたれかかったまま

眠りについていた雫は

海斗の呼びかけにより

目を覚ます

「眠ってたー」

「そんなところで寝てるなよ」

そう言ってひざ掛けを掛ける海斗

「妊娠中は眠くなるって本当なんだね」

ふふっとまだ出ていないお腹を触る雫に

上から手を重ね一緒に触れる海斗

「ねぇ?この子はどっちに似るかな?
わたし今夢見てたんだよね。わたしハーフじゃない?弟は茶色い髪だったの。海斗は黒だし、赤じゃないこともあり得るのよね」

赤い髪であることが

忌みきらわることがなくなってきた

今の時代だが

赤い髪であることで、生きづらさを感じてきた雫にとって

髪の色は重要らしい

「俺はどっちでも構わないけど、雫に似た女の子がいいな。いや…だけど女の子は嫁に出したくないしな」

「心配するの早すぎだよ!」


雫の家族はもういないけど

俺がずっと雫の側にいるよ

新しい家族も

雫以上に大切にして守ってみせるよ

家族に恵まれなかった俺に愛を教えてくれたのは、雫だから

これからはたくさんの愛を返していきたい

恥ずかしくて言葉に出来ないけど

俺はそう思ってる

〜雫の家族 完〜






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