きみに想う 短編集
「明日あの船に乗るのか?」

「そうよ。ついにこの日が来てしまったの」

話など聞くつもりなかった陸だが

「オレもその船に乗る!あいつらの情報はつかんでるから、これ以上好きにさせない」

帽子の男が熱く話すと

「おい!」

陸は後ろを振り返り声を掛けた

「お前たち、船がどうこうと言ったな?」

女は小さく震え

男は陸を睨みつける

当然だろう、陸は貴族の格好で

この町は貴族に寄って支配される港町

そんな貴族に話掛けられて気持ちのいいはずがない

「話を深く聞きたい!」

「断る!」

男は即答で陸の話に乗ることなく女の手を引いて

去ろうとする

ちっと小さな舌打ちをして

陸は足元を狙い、女だけを自分の元に寄せる

「取引だ。お前の持っている情報が欲しい
答えないとこの女どうなるかわかるな…」

陸は、女の腕にねじり上げるようにして

男に問うと

男は穢れのない真っ直ぐな宝石のような目で睨む

「だから貴族はキライなんだ」




< 7 / 21 >

この作品をシェア

pagetop