きみに想う 短編集
「力で人をねじ伏せて、高慢で自分が正しいと言わんばかりの態度…」

男はジリジリと陸に寄り

目の前に来てドンと靴を鳴らすようにすると

地面が揺れる波動が感じられ

陸がしっかりと捉えていたはずの女を

男は自分のほうへと引き寄せる

一般の民が魔力を使えるのは

ごく僅かなこと

しかも読唱破棄での高度な魔法を

気配なく使えるなんて

只者ではない

一瞬の出来事に気をとられるのと同時に

興味が湧いてくる

あの男は何者だ?

目の前からいなくなる男女に

さっきまでのイラつきから

面白い獲物を捕まえたかのように輝く陸の

瞳があった
< 8 / 21 >

この作品をシェア

pagetop