日陰の帳面
願い
細い指を

そっと絡め

二人で歩いた 寒い寒い冬の日



『すき』

目を見ては言えずに

そっと呟いた一言



きっとあなたは

『何?』

っていつもの柔らかい笑顔で振り向くんだ



白い息が溶けていく

雪はちらほら降り出して



このまま二人だけの世界に行けたら、なんて



二人で居る時間が全てで

一緒に居られるだけで幸せだった



涙が溢れるような幸せも

春の日溜まりのように

心に広がっていく想いも

全てあなたとだけ感じられるものだった



一人で過ごすには長すぎる夜も

不安で膝を抱えた夜も

そっと頭を撫でてくれる

大きなその手が

大好きで

大好きで

嬉しくて



涙が溢れた



『お互いのため』とか

『あなたの未来のため』とか

全部本当の想いだった

だけど

お互い一番つかいたくなかった思いやりだったのかも知れないね



『すき』と

目を見て言うのは難しくて

そっと呟く

そんな幸せを



あなたの側で

噛み締めていた



涙が出るほど幸せで

ただ側に居られれば嬉しくて



『すき』

そんな想いが

指先からじんわり伝わっ
ていけばいいのに



両手では抱えきれないこの想い



そっと絡めた指先から
温度は広がる




いつか運命が二人を分かつ時が来るかも知れない

でもその時まではどうか

どうか

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