As sweet honey. ー蜂蜜のように甘いー
「……ただいま」
照明をつけ、冷たい廊下を歩く。
廊下とリビングを繋ぐ扉を開けると
「ぅ……ううっ」
暗いリビングの奥から、呻き声が聞こえる。
も、もしかして……
「う、うー……」
「ママ?」
「うん……?あぁ、千代」
ソファに横たわるスーツ姿のママ。
「寝るならちゃんとベッドで寝なよ」
「ん〜っ、了解でーす」
蹴伸びをするママは、まだまだ綺麗だ。
「今日は悠太くん来てないのね」
「ママ、知ってたの?」
「まぁね。というか、千代はいいの?」
「何が?」
「お見合いよ、お、み、あ、い。パパが勝手に決めちゃったんでしょう?ま、あたしも了承はしちゃったんだけどね。実際、周防さんはいい方だもの。あまり断る理由がないのよね」
「……」
「周防さん、うちの娘とお見合いしたいなんて、そういう趣味なのかしらね。だって9歳差よ?」
ん?
お見合いの話って
「周防さんから持ちかけられた話なの?」
「そうよ?あら、聞いてなかったの?」
「うん、聞いてない……」
「そう。まぁ、それは置いといて、正直に話して頂戴。本当に千代はこのお見合い、受けるつもり?このまま結婚することになるのよ?」
「………嫌だよ」
「……ふふっ、千代の本音が聞けてよかったわ。あなた、好きな人でもいるの?」
ひと呼吸おいて、ママの表情が和らぐ。
「いないよ」
初恋もまだだもん
多分
「なら、とりあえずは会ってみなさい。会って話さないと分からないこともあるから。それで千代が嫌だって言うなら、ママが何とかするわ」
「ありがとう」
「じゃ、ママはベッドで寝てきまーす」
「ちゃんと着替えてからね」
「ごめんね、あんまり一緒にいてあげられなくて」
「そんなことないよ」
「あー、そっか、千代には悠太くんがいつも隣にいるもんねー」
わざとらしくニヤニヤとする
「ママったら……」
ママが部屋に入っていくのを確認すると、部屋着に着替えてから、さっきまでママが寝そべっていたソファに座って目の前のテレビの電源を入れる。
すると、丁度悠太がニュース番組で宣伝として出ていた。
『6月5日リリースのセカンドシングル「ボク達の輝き」店頭、ネット予約は随時行っていますので、皆さん是非僕達の歌声を聴いてくださいね!』
インタビューを受けた最後に、宣伝をする。
画面越しの悠太に、やっぱりちょっと違和感。
さっきまで一緒に居たのに
まぁ、この映像の悠太は少し前の悠太だけど。
そして、番組の途中で見たのは、ジュエリーのCM。
綺麗な女性の首元に、男性がネックレスをつけるという、よくあるシチュエーション。
ジュエリーが綺麗なのはもちろんだけど、それを身にまとうモデルさんも綺麗……
私もこうなれたら____________
って、何考えてるんだろう。