As sweet honey. ー蜂蜜のように甘いー





「今日は、俺の撮影を見に来てくれたの?」



まだ撮影前の拓巳くん。



「悠太が隣のスタジオで撮影なの。その隣で拓巳くんが撮影してるって聞いて、覗きに……」



「なんだ、俺はついで…ね」



学校とは違う、色気のある姿に余裕のある態度。



ギャップが激しい。



「というか、よく抜け出して来れたね。悠太くんに止められなかったの?」




「トイレに行くって言って出てきたの。流石にそれを言えば着いてこないから」




「あー、なるほどね」



「拓巳さん!」



すると、突然息を切らせたスタッフさんが拓巳くんの元へ走ってきた。




「ん、どうしたんですか?」




「実は……今回の撮影の相手役のモデルさんが急に来れなくなって……」



「それじゃあ、今日の撮影は中止ですか」




「はい、そうなります……」




そんな話をしていると、現場の上の人がやってきた。



「すまないね、拓巳くん。………おや、隣の子は、もしかして社長の……」



わ、私?



挨拶した方がいいよね。



「日比谷千代です」




「やはりそうだったか!随分と大きくなったね。うん、母親に似て綺麗な顔だ」



私、この人と会った事あるのかな




多分、小さい頃なのだろう。



「ああ、覚えいないか。私は茂松慎一だ」



「は、はぁ………」



少しの沈黙が訪れる。



スタッフさんもなんだかビクビクしてるし




「………千代ちゃん」



少し考え込むように指で顎のヒゲを弄る。



「は、はい」



何を言われるのかと少し不安だ。



「拓巳くんの相手役としてモデルになってくれないか」



「………え?」



相手役……?



「俺も賛成だなぁ。千代ちゃんが相手なら、いつも以上にやる気でそうだよ」



「拓巳くんもこういってる事だし、千代ちゃんがこういうの引き受けないってことは重々承知の上だ。今回だけ、今回だけでいいから!」



ど、どうしよう……今まで断ってきたけど、今は緊急事態な訳で……





「………………………わ、わかりました」




「助かる!じゃあ早速メイクと衣装を。君、案内してあげなさい」



隣にいたスタッフさんが私を案内する。




一度スタジオを出て、メイク室に向かうと、バッタリ会ってしまった。




「千代!どこ行ってたの?」



「えと、隣のスタジオにいる拓巳くんの所に……」




「もう!早く戻ろう」



そう言って私の手を引こうとする。



けれど、このあとのことを引き受けてしまったから



「それは出来ないんだよね」




「どうして。てかどこ行くの?そっちの方向、メイク室だけど……って、まさか千代が撮影!?」



察しがいい。



「……」



肯定の意を示すように黙った。



「そ、そっか……でも、いいの?」




「うん、緊急事態だから……じゃあ行ってくるね」




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