As sweet honey. ー蜂蜜のように甘いー
その後も、衣装やメイク、ヘアスタイルを変えたりしながら、何枚も撮影をした。
その間、チラリと悠太の顔を見るけど、不機嫌そうなままだ。
ようやく帰れる頃には、空も随分と真っ暗になっていた。
3人で電車に乗るが特に会話はなく、拓巳くんは先に降りてしまった。
帰宅ラッシュの電車は、人が沢山で押し潰されてしまいそう。
「千代、こっち」
悠太が、そっと手を引いて角へ匿ってくれる。
あぁ、こういうの漫画で見たことあるなーなんて思いながら。
そんな平凡で夢のない事を思いつつも、心拍数は上がっている。
私達の家がある最寄り駅に着くと、車内との温度差でか、ヒヤッとする。
二人並んで歩いてはいるけど、まだ会話はない。
そうしているうちに、すぐマンションの入口に着いてしまった。
二人立ち止まり、私は悠太の顔色を伺った。
「………ごめんね?」
「どうして千代が謝るの」
「悠太に何も言わず拓巳くんのところに行ったり、モデルの代理引き受けたりしたから………」
「別に、そこに僕の許可は必要ないと思うんだけど。まぁ、拓巳くんのとこに行くなら、一声かけてくれても良かったとは思うけど。でもさ、モデルの代理をやるかやらないかは千代が決めることでしょう?それを駄目だとか、良いだとかいう権利は僕にはないよ」
「そうだよね」
じゃあ、どうして……
「千代は分からない?僕がなんで不機嫌か」
他に何かしたっけ……
頭を捻って考えるけれど、思い当たる節はない。
お見合いのこと?
でもそれはこの間の事で今日じゃない。
「はぁ、いいよ、まだ分からなくても」
「ごめん」
「謝らなくても良いから」
「うん。じゃあ、また明日」
「また明日」
結局、不機嫌の理由は分からず仕舞い。
そのまま、また平凡な日々は過ぎた。