As sweet honey. ー蜂蜜のように甘いー
翌朝、もうすっかり軽くなった体で蹴伸びを_____と言いたいところだができそうにもない。
時計はまだ5時だ。
だけど、蝉はもう起きているようだ。
元気に鳴いている。
空も大分明るいし。
「さてと、どうしようかな」
蹴伸びどころか、身動きさえできない。
どうしてって、体に悠太が巻き付いているからだ。
どうしたらこうなった。
生憎、私がベッドから転げ落ちたわけではない。
悠太が勝手にベッドに乗ってきたに違いない。
「もう……」
なんだかデジャヴ
力の抜けた悠太の腕を解くと、なんとか脱出する。
リビングにはまだ誰もいない。
ちゃっかりバスタオルを拝借すると、シャワーを浴びた。
そして、昨日の私服に着替える。
一度帰りたいところだけど、鍵はどうしよう。
開けっ放しで帰ったら良くないよね。
とりあえず、誰かが起きるまで部屋で待機することにした。
あいかわらず、悠太は寝ている。
寝顔は可愛いな。
つんつんと頬をつついてみるけれど、反応なし。
「……よ……す…き」
「え?」
「えへへ」
「っ」
今、私の事好きって言った?聞き間違え?
呑気ににやけ顔で寝ている悠太。
「心臓に悪いよ……」
それからしばらくすると、廊下から足音が聞こえてきた。
リビングに行くと、宗弥さんがいた。
「ああ、千代ちゃん。来ていたんだね」
「どうも」
「悠太はまだ寝てるのかな?」
「ぐっすり寝てるみたいです」
「そうかい」
悠太はどちらかと言ったら、宗弥さん似だ。
雰囲気がそっくり。
悠太も、将来こんなふうになるのだろうか。
「コーヒーでいいかな」
「はい」
「悠太とはその後どうだい?」
宗弥さんと向き合うようにして座った。
「至って普通です」
「僕もね、汐音に恋して8年目でやっと告白したんだよ」
な、7年も!?
「意外です」
「汐音とは中学時代からの付き合いでね。一目惚れだった。でも、ずっと友人、のちに親友のままで、なかなか切り出せなくて。気づけば8年が経って、お互い大人になった。そんな時、俺の友人が汐音を好きになったんだ」
「え」
「それで焦ったんだ。そのまま勢いで告白した。そしたら汐音、なんて言ったと思う?」
なんて言った……?
少し考えたけど、分からない。
「なんて言ったんですか?」
「『随分待ったわ。遅いわよ!』って怒られてしまったよ」
「それって____」
「返事は『はい』だった」
「な、なんだ」
「ははっ、降られたとでも思ったかい?もしその時振られていたら、今悠太はいないだろうね」
「想いを伝えるって、大切ですね」
「そうだよ。あの時は、結果的に友人への対抗心に駆られたわけだけど、きっとそんなことが起こりでもしなかったら……なんて考えるとゾッとするよ」
宗弥さんは、苦笑いをしながら、コップに口を付けた。
「そう考えると、悠太は本当に僕に似ているよ。まあ、悠太の方が僕より1枚上手の様だけどね」
「どういうことですか?」
「ん?いやあ、悠太は大胆だな、ってね」
「え?」
「ははっ、別にたまたま見てしまっただけさ」
なんのことだかさっぱりわからない。
「……?」
「夜中帰った来て部屋を覗いていたら、悠太が君の寝床に潜っていたもんだからね」
「へっ!?」
や、やっぱり……
「若いっていいね~。どうか僕の息子をよろしく頼むね」
「は、はあ……」