As sweet honey. ー蜂蜜のように甘いー
夏祭りは危険な香り
お祭りの賑わいが直ぐ近くに聞こえる。
「で、結局今年も皆とかぁ……」
甚平姿の悠太が項垂れる。
「まあまあ、そうぶーぶーしなさんな」
妙に言い回しが古臭い圭くんが悠太の肩に手をやる。
「今年も随分な賑わいだねぇ。去年よりも人が多いんじゃないかな」
「そういえば、そうだな。それも、男女のカップルが多いな」
「あぁ、なんか今年は『カップル限定〇〇』っていう企画があるらしいぜ」
〇〇?
なんだろう、それ。
「隼人くん、詳しく教えて!」
さっきまで項垂れていた悠太が、キラキラとしている。
「男女のカップルが一緒に屋台で食べ物とかを買うと、10分の1の確率でサービスしてくれるんだってよ」
「10分の1の確率なのか」
「まあ、そこは大人の事情ってやつだろ」
「じゃあ、俺と千代ちゃんは先にあっちの屋台を見に行こうか」
スッと拓己くんが私の手を握った。
ごく自然に。
「あ、拓己!抜け駆けすんな!ってかお前と一緒に居ると女の子たちが千代ちゃんに嫉妬しちゃうだろ!」
「大丈夫大丈夫。ちゃんとエスコートするから。それに、今日は髪型変えてるしバレないバレない~」
今日は皆、各々甚平だの浴衣だのを着ている。
髪型も、拓己くんは後ろでちょこんと結んでいる。
隼人くんはツンツンの髪を降ろしてストレートに。
逆に流くんは髪にクセを付けている。
圭くんはサイドの髪をピンで留めている。
悠太は……うん、いつも通りだ。
私も、今日は浴衣を着て、髪をアップにしている。
「無理ある」
「ああ、バレるな」
「うんうん」
「ま、千代ちゃんと二人きりになるのは諦めろ。代わりに俺が____な?」
「え、えぇ~」
「とは言っても、もう皆バレてるよ?」
視線が痛い。