As sweet honey. ー蜂蜜のように甘いー
その後、屋台を一通り回り終えた頃、アナウンスが流れた。
『このあと19時30分より、花火が打ち上げられます。広場は大変混雑致しますので、なるべくつめて座る様、お願い致します。』
今は丁度7時を回る頃だ。
「千代、こっち」
「えっ、ちょっと……!」
急に手を握ってきたかと思えば、そのまま急に横道に抜け出した。
皆、周りに人が多いせいか、私達が居なくなったことに気付いていない。
「ね、ねぇ、はぐれちゃうよ」
「わざとに決まってるでしょう?」
「な、なんで……」
「そりゃあ、二人っきりになりたいから」
「でも、花火まで時間も無いし。こんなに人が多いと連絡取っても合流出来るか……」
「花火、そんなに皆と見たい?」
「それは……」
折角皆で来たんだし、見たいに決まってる。
だけど、言葉が詰まって口から出ない。
「僕と2人で見るのは嫌?」
「い、嫌じゃない!」
それはすんなりと口から溢れた。
「それは、直ぐに言えるんだ?」
「ぐっ……」
薄暗がりの中でもよく分かる、悠太の悪戯な笑み。
ちょっとドキッとした。
「なら、いいよね」
繋いだままの手が、より一層絡められる。
ああ、なんだから流されてしまいそう。
夏の暑さのせいなのか、お祭りの空気のせいなのか、それは分からない。
けど、なんだかドキドキして、手に熱が帯びてる。
この熱、悠太に伝わっちゃうかな。
「あっちにとっておきの場所があるんだ。行こう?」
「……うん」