あなたにキスの花束を
チノパンとセーターとチェスターコートにマフラーなんてシンプルな装いだけれど、元が良いから何気ない着こなしが嫌味なく決まっている。
そっと盗み見た横顔も綺麗で、眼鏡も似合いそうだなあ、なんて職業病がついまろび出そうになる。
私と同じように平日しか休めないお仕事なら、普通の人よりデートもしやすいんじゃないかな。
なんて考えたりして、黙ってたら私の妄想はどこまでも図々しく暴走しそうだ。
「何?」
不意に彼が私の方を向いて問い掛けてきた。
しまった。じっと見詰め過ぎた。
咄嗟に頬が熱くなり、私は彼からさっと視線を逸らす。
「いえあの、どこに行くのかなあって!」
「どこに連れてって欲しい?」
「え、リクエスト可能なんですか」
「今は不可」
ばっさり断られた!