あなたにキスの花束を



「いい加減にしてください。私、ホストとか興味無いですし」

「そんな事言わないでさあ。一回試してみてよ。俺サービスするよ」

「だから結構ですってば! あ、ちょっと放して…!」



「とにかく話聞いてよ」なんて言いながら、青年は早足で歩く私を止めようとしたのか、私の腕を掴んできた。

振り切ろうとする私と軽く揉み合いになる。


───その時だ。


不意に傍らからふっと別の長い腕が伸びてきて、私の身体はその腕に抱き取られてしまった。



「…ッ!?」



勧誘の青年の手は離れたものの、代わりに私は、別の背の高い誰かの広い胸板に縋るような形になっている。

その瞬間、柑橘系の爽やかな香りがふわりと漂い、私の鼻腔をくすぐった。
ああ、この香水は「ナイルの庭」だ。

いや、そんな事見抜いてる場合じゃなくて!

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