あなたにキスの花束を
漠然としたイメージを頭に思い浮かべてみる。
彼が惹かれるぐらいだから、きっと可憐な人なんだろう。
顔も知らない女の子に似合う花束を思い描いていて、ふと気付いた。
あ、これ、お客様に眼鏡のフレームを選んであげる時の感じに似てる。
初めて眼鏡を掛ける学生さんとか、老眼鏡なんか掛けたくないって駄々を捏ねるおばあちゃんとか、自分に眼鏡なんて似合わないって思い込んでる人達に。
そういう人達が喜んで使ってくれるようになる眼鏡を、一緒に悩んで選ぶ時のあの感じ。
喜ぶ顔を見たいこの気持ちは、同じものだ。
そんなつもりで選んであげたら、私に精一杯の事が出来そう。
私の中で何かが腑に落ちたのが分かったのか、傍らに佇む司さんが微笑んでくれた。
「選んで。君の好きなように」
モードが切り替わった私は、それまでの困惑顔を一掃して、強く頷いた。