あなたにキスの花束を


というより検眼の時に私自身が問診してそう書き込んだじゃないか。

自分が至らない所為で気付けなかったのは分かっているけれど。
でも最初に声を掛けてくれなかった片桐さんを、少しばかり恨んでしまう。

すっかりいじけた私は俯いて、地面に無為にのの字を書く。



「好きな人が居るクセに、合コンに来たらいけないと思います」

「合コンだって知らずに友達に呼ばれたんだ」

「でもいけないと思います」

「うん、反省してます。でも後悔はしてないよ。君に会えた」



またそんな、乙女の心をときめかせるような事をナチュラルに言いおって!
王子顔でそんな事言うと、勘違いしちゃう女の子も居るんですよ。

彼は自覚が無さすぎる。

私はのの字の大量生産をやめてキッと視線を上げ、彼を正面から見据える。
何か一言、お説教してやらねば。

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