あなたにキスの花束を
私も愉しかった。
王子めいた容姿に最初は委縮していたのに、気が付くと彼と花を選ぶのが、とても愉しい時間になっていた。
でも今更、そんな事を言われたって。
元々その花を選んだのは、貴方の好きな人に贈るためでしょう。
だったらそんな優しい事を、言わないで欲しい。
「片桐さん。手を放してください。そんな風に言われたら私は」
誤解してしまう。彼に惹かれ始めたこの気持ちを、抑え込めなくなってしまう。
だから私は、取られた手を引こうとしたのに。
不意に強く握り返されて、それが出来ない。
「片桐さん、放して」
「俺は」
彼の伏していた長い睫毛が擡げられ、眼差しが私へと真っ直ぐ向く。
「俺は、君に惚れています。ずっと前から」
私はその瞬間、息が止まってしまった。