あなたにキスの花束を
***





彼の言葉が私の脳内に沁みて、意味を咀嚼するまでにひどく時間が掛かる。

片桐さんはずっと、私を見ていてくれたって?

信じられないという顔で唇をわななかせる私を、彼はひたと見据えたまま。



「俺が気に入ってるフレームが生産終了するって聞いたら、君は俺のために同じものを取り寄せて俺が言う前に取り置きしておいてくれたし、修理する部品が必要になる度に支店の在庫を全部調べてくれたりしただろう」

「それは、だって仕事だから…!」

「分かってる。でも、俺のためにそうやって毎回一生懸命になってくれる姿だけじゃなくて。店の前を通りかかる度に見る君は、いつも楽しそうにお客さんの相手をしているから」

「それも、仕事だから……」

「それだけじゃないと思うよ」



彼は和らいだ声音で私の言葉を否定すると、取っていた手を優しく引いて、私を静かに胸の中に抱き寄せた。

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