あなたにキスの花束を


やっと解った。
彼が最初から無条件に私を信頼してくれていた理由が。

驚きと緊張で強張っていた私の頬が、自然と緩んでいく。


私は彼を好きでいていいんだ。諦めなくていいんだ。


胸にほどける安堵と、込み上げる喜悦とが。
私の目の奥に熱の塊を催させ、温かいものが零れ出してしまう。

私は笑っているのに泣いている、ヘンな顔になる。



「ハエトリグサにしなくて良かった…!」

「君が喜んでくれるなら、俺は構わなかったけどね」



彼は茶目っ気たっぷりに言うと、長躯を僅かに屈めて私の顔を覗き込んだ。
思わず笑いを誘われて、私の頬が綻ぶ。

そうだ、私もちゃんと言わなくちゃ。



「片桐さん」

「はい」

「私はまだ、あなたの事がちゃんと好きかどうかは分からないです」

「うん」

「でも、惹かれてます。好きになれると思います」

「好きにさせて見せるよ」



やっぱり自信満々に言う彼は、眩しいほど王子様だ。


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