あなたにキスの花束を
身長差を埋めるように屈んだ彼の唇が、私の耳元に近付く。
「ゆっくりでいいから。これからもっと沢山俺を知って、俺を好きになって」
静かに落とされた囁きは、身が竦むほど艶めかしく響いた。
そう言えば、お店で出会う片桐さんに、私はどんな印象を持っていただろう。
愛用の眼鏡に触れる彼を思い浮かべる。
『このフレーム好きなんですよね。形とかラインとか、俺の顔に馴染む気がして。だから他のフレームには、できれば変えたくないな』
メーカーでは生産終了する予定だと告げた時、そんな風に言って寂しそうに笑っていたのを思い出す。
同じフレームを取り寄せておいた事を知らせた時の、嬉しそうな顔も。
こちらの胸まで温かくなるようなその表情が、ああ、いいなあって、思ったんだった。