あなたにキスの花束を


今頃思い出すなんて、と自分で自分が可笑しくなる。
私は少し爪先で伸び上がって、彼の耳元に囁く。



「ねえ、片桐さん」

「うん?」

「私、やっぱりもうあなたの事が好きかもしれません」



告げると彼は、流石に少し驚いたのか、一瞬動きを止めたから。

その隙を狙って、私は彼の頬のラインに、唇を触れさせた。
ほんの一瞬、羽根が掠めるような軽いキス。

片桐さんは咄嗟に顔を上げて、眸を丸くして私を見下ろしている。
私はえっへんと得意そうにして。



「ここまで散々驚かされっ放しだったから、今のは仕返しです」



このぐらいは許してもらってもいいと思う。
けれど私のドヤ顔を見て、彼はにやりと笑んだ。

爽やか王子の笑顔じゃなくて、さっき一度だけ垣間見た意地悪な笑顔だ。

あれ、何かまずかったかも。

私がそう思った時には、既に彼の両手は私の頬を包んでいる。



「じゃあ返り討ち」

「!?」


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