あなたにキスの花束を
私が何か言い返す前に、片桐さんは覆い被さるようにして、あっという間に私の唇を奪ってしまった。
重なる温もり。啄まれて淡く開いた唇から、忍び込んでくる彼の舌先。
けれど私の舌を強引に攫うでなく、あくまで戯れる舌先が、私の舌に触れては逃げる。
私がもどかしくなって追い掛けるのを誘うように。
気付けば私はまんまと彼の手管に嵌まって、頬を斜めに傾けて、深く舌を絡ませる咬合を求めていた。
私の引き運が悪かったのは、これを手に入れるためだったんじゃないのかな、なんて思えるキスだ。
この先飲むアサリの味噌汁が毎回じゃりじゃりしたって、ハンバーガーに一生ピクルスを入れ忘れられたって。
そんな事ぐらい構わないっていつの間にか考えているゲンキンな自分が可笑しくて。
抱いた胸の中で綻ぶ色とりどりの花達と同じように、私は笑ったのだった───
【end】