正しい紳士の愛し方
「大和さん……」
樹は恐る恐る声を掛けた。
「あっ……いらっしゃい」
大和さんは女性を半ば強引に玄関から追い出して、いつもと変わらない笑顔で樹のことを出迎える。
「やっぱり、女ね!……でも、いつもと毛色がちょっと違うような……」
女性は少々興奮気味に樹に近づいた。
そして、足の先から頭のてっぺんまで舐めるように見定める。
近くで見るとより長身でスレンダーな女性だった。
「あの……」
樹は困ってしまって視線を泳がせた。
「樹ちゃんが困ってるだろう……」
大和さんの一言に女性の口角がギューっと上がる。
「あなたが噂の“樹ちゃん”!あらあらあらあら……ずいぶん可愛いお嬢ちゃんね。私、大好きよ。こういうウブな子って……」
突然、女性は樹に抱きついた。
ふんわりと花の匂いがする。
あまりの出来事に樹の思考回路は爆発寸前。
えっ……こういう場合、怒るべき?
誰に……?
帰る方がいいのかな……
なんでアタシが……?