正しい紳士の愛し方
「はい、乾~杯……」
樹は缶ビールを軽く掲げてゴクッと一口飲む。
「はい、はい、乾杯」
満も缶酎ハイを手にとって形だけの乾杯をしてみせた。
「アルコールだけじゃすぐ酔っちゃうよ。なんか持ってくるからちょっと待ってて」
満はまだタブの開いてない缶を机に置き、足早にキッチンに向かう。
テーブルに置かれた夕飯の残り物。
酒の肴(さかな)になりそうなおかずはきんぴらごぼうぐらい。
きんぴらごぼうの入った鉢と箸を二組持って居間に戻った。
「おっ!満ちゃん特製きんぴらごぼう」
樹は机に置かれたおつまみを見て目を輝かせた。
「残り物だけどね」という満の言葉は聞こえていない。