正しい紳士の愛し方
自分で言って悲しくなる。
彼と出逢って、幾度となく口にした“好き”の二文字。
「返事は……?」
「“俺も樹ちゃんのこと好きだよ”って」
これも何度も聞いた台詞。
「それって両想いじゃないの」
「“好き”の意味がさ、なんか違う気がするんだよ。大和さんのアタシに対する“好き”は、アタシ……満が作るきんぴらごぼうが大好き……っていうのと同じ気がする。
愛しているじゃなくて、嫌いじゃないの“好き”なんだよ」
樹はきんぴらごぼうを箸でつまんで、それを淋しそうに見つめる。
自分は所詮たべものと同じレベルなんだ。
いつも会社で女子社員たちに囲まれている彼を思えば、満も何も言えなかった。