正しい紳士の愛し方
樹はたまらず下を向く。
チークを塗りすぎた時みたいに頬を桜色に染めて。
彼もそんな樹の様子になんとなく気付いて手を離した。
「夕飯には少し時間があるね。樹ちゃん、どこか行きたいところある?」
樹は車内の低い天井を見上げて思案する。
「……プリクラ撮りたい!」
「プリクラ?」
彼は予想していなかったリクエストに首を傾げた。
「やっぱ、ダメ……ですか?」
よく考えれば分かること。
そういう事で楽しむ年齢でもなかった。