正しい紳士の愛し方
「いいよ。撮りに行こう」
一瞬、戸惑いの表情を見せた彼だったが、樹のリクエストを快く了承する。
あっさりOKが出たものだから、樹は急に不安になって「本当にいいの……?」と再度問いかけた。
念押ししてくる樹の態度がよほど可笑しかったのか、彼はクスッと笑って「いいよ」と頷く。
「駅前のショッピングモールでいいかな」
樹は「はい」と首を縦に振る。
彼は車のエンジンをかけ、駐車場の出口に向けてハンドルをきった。
「プリクラとか何年ぶりだろう。目とか宇宙人みたいに大きくなるって、あれマジなの?」
「宇宙人は大げさだけど、前より色々できるかも」
「それ詐欺じゃない?」
「少しでも可愛く見せたい乙女心と言って下さい」
「なるほど。それは、失礼しました」
彼は自身の非を謝罪しながらも楽しそうに笑っていた。
そして、駐車場を後にすると、ショッピングモールに向かって車を走らせた。