正しい紳士の愛し方


満を通じて大和さんと出逢ってから何度もデートを重ねてきた。


もしかすると、デートだと思っているのは自分だけかもしれないけど、彼のそばにいられるだけで楽しかったし幸せだからそれで良かった。


遊園地に水族館、映画、プール、クリスマスイルミネーション……


二人で様々な場所に行ったけど、写真の類は無かった。


彼と一緒にいる時間が幸せすぎて、そういうものを必要としない。


樹自身が求めなければ、大和さんから言ってくることはなくて。


自分と大和さんの間に目に見える“形”が無いって気付いて、急に怖くなった。


樹は過ぎていく景色を呆然と眺める。


「樹ちゃん、ショッピングモールに行くなら買い物でもする?」


「…………」


返答をしない樹に、彼はもう一度「樹ちゃん……?」と呼びかけた。


樹はハッとする。


完全に自分の世界に入っていて、好きな人の言葉さえ聞こえていなかった。


「……あっ、ごめんなさい。ボーっとしてた」


樹が謝罪すると、大和さんは心配そうに「気になる事でもある?」と尋ねる。


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